晴航雨読

〜ヨットとラテン語と、少しだけチェロのこと〜

青木ヨットスクール ASA BKBコース修了

宣言下ではありますが、いろいろやむを得ない事情で、週末、青木ヨットのヨットスクールに行ってまいりました。

今回は、ベーシックコースの2コマ目、BKBコースです。コースの紹介は、予習の記事で書いたので、雰囲気だけ。

梅雨ということで、くもり時々小雨という、あいにくのお天気でしたが、本降りにならなかったので、暑くないだけ良かったかも知れません。

9時半始まりなので、1日目は、だいたいいつも7時過ぎに京都を出て、講習開始ギリギリに到着する感じですね。

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ナビの到着予定時刻は9時くらいです

高速料金は3500円くらい。事故渋滞とかがあると、別ルートに切り替えて4500円くらいになる時もあります。まあ、いくつかルートがあると安心ですけどね。できれば、3千円ちょっとで行きたいものです。

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久しぶりの田尻マリーナです

やっぱりマリーナは青空が似合いますね。今日は曇天。1日目は、あまり降らない予報なので、オイルスキン(雨合羽)まではいらないでしょう。

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今回はいつもの教室が工事中で、小教室の方でした

ギリギリに到着すると、いつもの教室が工事中で、ちょっと慌てました。こういうこともあるので、もう少し余裕をもって到着しないといけません。

教室に入ると、当然、皆さんお待ちかね。皆さん、といっても、今回は、受講生2人でした。先生は、SDKコースでお世話になったU先生。一緒に受講されるのは、愛知からお越しのMさんです。ナビゲーションのコースの時は、長崎の方とご一緒だったので、青木ヨットさんのヨットスクールは、いつも遠方から来られていますね。京都だと、ギリギリ通えますが、愛知だと前日も泊まりでしょうね。どうもお疲れ様です。

 

さて、講習ですが、実習メインのコースは、だいたいは実習の説明程度。テキストは、事前に読んできているという前提ですね。大学のゼミと同じです。質問があったら、何でも教えてくれますよ〜。

 

一方、実習の方ですが、こちらも基本、「〇〇をやってみてください」から始まります。で、出来なければ、教えてくれます。そういうスタイルなので、もし出来なくても、「えーと、どうするんでしたっけ」と教えてもらいましょう。ベーシックコースで学ぶことは、すべて「出来て当たり前」のことばかりで、安全に出航して、帰港するための最低限のスキルです。

とはいえ、自分の船でも、自然に体が動くほどには、出航準備や操船になれていないので、いつも「えーと、何するんだっけ」という感じなんですよね。40年ほどキャリアのある車の運転と違って、必要な作業を流れるようにこなせるようになるには、これから少しずついろいろなことを経験して、知識とスキルを自分のものにしていくしかない、ということですね〜。まあ、それも楽しみのひとつです。

 

といっても、私の場合、もっと初歩的なところで、どんどんつまづきます。出航準備が出来たかなと思うと、先生は「これでは出航できませんね」。「あと、何でしたっけ」と私。しばし、思案して「あ、これか」とティラーがまだ雑索で固定されていました。

「では、エンジンをかけてください」。この船は船外機、使ったことはありますが、「どうするんでしたっけ」。「まず、キルスイッチをつけてください」。「ああ、キルスイッチはどこですかね」。「お尻の下にあります」。そりゃわからんやろ、という感じで、まあだいたい超初心者レベルなわけです。(笑)

それに、本当は、それ以外にも、出航前点検にはいろいろありそうですが、それは事前に先生が準備しているわけで、少しだけ作業を残してくれている、ということなんですよね。

 

2日の実習を通して、自分として、一番危なかったなと思うのは、メインセールを揚げる前に、ブームトッピングリフトを外そうとしたことですね。実際、練習艇と同じヤマハのY23で、ブームを落下させたことがあるのですが、あの時、たまたま娘が下になくて良かったなぁと、ひどく反省したのに、またやってしまいました。

こういうときも、先生はすかさずストップをかけてくれるので、まさに教習所の先生というか、初心者の行動は大きな事故につながる可能性があるので、大変だと思います。ありがとうございます。

 

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実習は関空連絡橋の真横です

実習は関空連絡橋の真横の海域で行われます。ここは関空があるおかげで、うねりも少なく、初心者の練習には最適です。

関係ありませんが、カタマラン型のヨットがどこかに帰港していきました。カタマランは、ASAのライセンスでも、1コース別枠になっているくらいで、また操船も違う感じなんでしょうね。雑誌なんかで見かけるタイプのものは、豪華ヨットの部類で、新艇だと億ション、中古艇でも5000万以上はするでしょう。ラグジュアリーなヨットです。

もともと、海外でヨットというと、60〜80フィート以上のものを連想するようで、豪華クルーザーもヨットの範疇です。そのうち、帆があるものをセーリングヨットというらしいです。

 

 

40フィート以下のクルーザータイプのヨットは、セーリングボートですね。なので、海外の友達に、「ヨットに乗っている」というと、「Wow!, amazing」とちょっと誤解されるかも知れません。(汗)

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カタマラン型のヨットが帰ってきました

さて、今回の実習のポイントは、以下のような感じでした。

  • 出航準備・離岸
  • セールアップ
  • 風位によるセールトリム
  • タックとジャイブ
  • ヒーブツーによる停船とヒーブツー離脱
  • 8の字救助法
  • 帰港・接岸
  • 後片付け

出航準備・離岸

出航準備は、最終的に、受講生だけで出航できることが求められます。教習艇は、メインセールは、ブームにつけれた状態でカバーがかけてあり、ジブは3種類(ジェノア、レギュラー、ストーム)が各々パッキングされてバウにしまってあります。「今日はどのジブにしますか」と先生。Mさんはちょっと考えて「ジェノアにします」。「じゃあそうしましょう」。え? どうしてそう思うの? といきなり私は出来ない子の気持ちに。今日は、風が弱いので、ジブも大型にということなんでしょうね。良かったぁ、聞かれなくて。

ジブは取り付けると、少しだけ、ハリヤードを引き、風をはらまないように、雑索で縛っておきます。メインも、少しだけ、ハリヤードを引いておきます。

離岸は、教習艇は桟橋頭付けなので、バックでの出航です。となりの船がほぼピッタリに停っているので、車の感覚で、ちょっと間をとろうとティラーを傾けると「艇のほぼ全部が出るまで、真っ直ぐ後進します」と教えてもらいました。たぶん、船は回転の中心がキールのあたりなので、舵を切ると容易に船首が隣の船に接触するんでしょうね。

セールアップ

セールアップは、すこし沖に出てから。まず、メインセールから揚げます。ジブはある程度、どの風位でも揚げられますが、メインは、船を風に立てないと風をはらんであげられないので。

逆に、ジブが揚がったら、トリムは今度はジブから行います。メインは基本的に、ジブの風の影響下にあるから、です。ややこしい。

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沖に出てセールアップ。今回は風が弱かったのでクルーは風下側に

今回は、23フィート艇なので、それほど力はいらないはずなのですが、それでもメインハリヤードを引くのは、少々骨がおれます。自艇では、ウインチハンドルを10インチに変えたので、だいぶ楽になりましたが、こちらは、普通の8インチハンドル。しかも、ロックなしで、容易に外れて飛んでいくので、海に落ちそうです。船は、本当にいろいろですよね〜。

風位によるセールトリム

初心者ですから、あまり風が強いのも困りますが、ヨットはある程度風があった方が安定するので、かえって操船が簡単という面もありますね。そもそも、風位によるセールトリムといっても、風がないと、これはなかなかむずかしいです。

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風をよむU先生。かっこいい

あと、この練習艇、風見がついていません。先生は、青木ヨットでは、風見は使わないので、風位を感じてください、とおっしゃっていましたが、実は、私が最初にヤンマーマリーナ琵琶湖のレンタル艇で乗っていたY23も風見がありませんでした。風見は、ある意味、なくても乗れるので、台風などでとれてしまうと、わざわざ直したりしない、というのが真相なんじゃないかな。でも、Mさんはだいぶ風位の見方にこだわって、先生に質問されていたので、勉強家なんだな、感心いたしました。

タックとジャイブ

個人的には、恥ずかしながら、ジャイブが風下回りでタックを変えることだと、今回初めて知りました。というのは、最初に琵琶湖でヨット講習に通ったころ、先生が「そっち回りだとジャイブしてしまうよ」と言われたので、それ以来、勝手にジャイブ=ワイルドジャイブと思い込んで、ジャイブは避けるべきことなんだと思っていたのです。

といいつつ、タックと思って、ジャイブしていたり、バラバラだったのですが、今回、ハッキリとタックとジャイブの意味がわかった次第です。(遅)

もう1点、ヨットで交わされる号令ですが、シングルハンドだと、黙って操船しているので、何となく気恥ずかしいですよね。で、前回のSDKコースでは、受講生が一人だったので、あまり感じなかったのですが、今回、相方のMさんと各々スキッパー役、クルー役を交代で行ってみて、初めて、あることに気が付いたのです。

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風位を読みながらティラーを操作するMさん

それは「声に出さないと意思が伝わらない」ということです。あまりにも当然なことで、お恥ずかしいのですが、スキッパーがいつ、何を、どのように始めようとしているのか、はっきり言ってくれないとクルーはそんなことは知らないわけですよね。馴れてくれば、各々が、以心伝心、最適な行動をとるという状況もあるかも知れませんけど。

そう思うと、不思議と恥ずかしさが、すっと無くなりました。おもしろいですね。

ヒーブツーによる停船とヒーブツー離脱

これもシングルの悩みのひとつなのですが、セーリングの途中、停船して休憩するのがむずかしいのです。何故なら、セールを下ろすのにティラーを離してマストまで行く必要があるし、そもそもセールの揚げ降ろしは、いろいろトラブりやすいので、できればリスクは避けたいからです。

ヒーブツーについては、前にも少し教えてもらったと思うのですが、今回ようやく、帆を張ったままの状態で停船する技術、ということが分かりました。これはすばらしい。帆船は、帆を降ろすのが大変なので、こういう技術が考え出されたんでしょうね。これを考えた人に感謝状を送りたいくらいです。

しかも、ヒーブツーは風がある程度強い方が、安定して停船できるとのことで、願ったり叶ったりなんでよね。風が強いと、緊張しますから、本当にできるなら、ぜひセーリングに取り入れたい技術です。

ヒーブツーのポイントは、アビームの状態で行き足を止め、メインは風下へ流し、ジブは風上側に固定して、風を受け止める(流さない)。ラダーは風上側一杯に固定。これで、船は、舵によって風上に登ろうとする力と、ジブがはらんだ風の抵抗がバランスして、細かく行きつ戻りつ、停船してしまう、という理屈のようです。

ヒーブツーは、次の8の字救助法にも活用されています。

8の字救助法

落水者の救助法は、いろいろあるそうですが、8の字救助法は、ヒーブツーを利用して、帆走のまま安全に停船して救助できる、優れた救助法ということです。

初めて取り組みましたが、Mさんも私も、何度か繰り返し練習して、成功率100%でしたので、確かに優れた救助法なんだと思います。

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8の字救助法(常に落水者の方角を呼称し続ける)

仮にクロースホールドで帆走中に落水者が発生したとすると、8の字救助法の流れは、以下のような感じになると思います。

  1. 落水者発生
  2. ただちにヒーブツータックに入ります。落水者は6時の方向
  3. ポイントは、落水発生ラインより風下に下らないことです。落水者は5時の方向
  4. ティラーを押し、ラフィング。ジブセールは放置。もしアビームより風下方向に帆走していた場合は、速やかにこの位置まで、クロースホールドで切り上がる。落水者は7時の方向
  5. 落水者が8時の方向に見える頃、ジブに裏風が入り始めるので、そのタイミングでメインシートを緩める
  6. アビームに近づくと、メインセールはするすると風下に出ていく。ジブは裏風を受けて膨らむがそのまま放置。落水者は11時の方向
  7. 落水者を正面にとらえ、接近していく。艇速は1ノット程度。ジブに入る裏風でゆっくり進んでいる
  8. 落水者は12時の方向。スキッパーは「ポート側で救助します」と号令し、落水者の直前でラフ。ティラーを押し、船はヒーブツー状態で、落水者のところでピタリと停船する。落水者救助

落水発生から、落水者を見失わないように、方角を呼称しますが、この流れだと、メインシートを緩めるタイミングが、必ず落水者が8時の方向に見えたときになるので、その意味でも、方角の確認が重要になりますね。つまり、その分、スキッパーはティラーの操作に集中できるわけです。

基本的に、8の字救助法は、シングルハンドで実行できる救助法ということです。もちろん、落水を起こさないのが大前提ですが、8の字救助法には、セーリングの重要なスキルがいろいろ含まれているらしいので、そういう意味でも、ぜひ繰り返し練習して、習得しておきたいですね。

帰港・着岸

今回は、2日ともセーリング日和とは言い難いお天気でした。特に2日目は、午前中は雨。昼から晴れたのはいいのですが、完全な無風状態となりました。

2日目は最後に修了テストもあるので、早々に帰港することに。

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完全な凪。風が回復するかディスカッション

この時、大きな風の流れは、南東の風ということで、紀伊山地が風をわけて、風は徳島の方へ。ちょうど関空あたりが凪になっていたそうです。

まあ、仕方が無いので、セールを降ろし、機走で帰港することに。

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セールを降ろす作業にもだんだん馴れてきました

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バースに向かう練習艇(写真は1日目)

最後の着岸は、私がヘルムスマンです。1日目、岸壁にコツンとやってしまったので、少しドキドキしながら、バースに入っていきます。

今回は、まずまずのタイミングで、行き足も止まり、無事に着岸できたようです。後片付けをして、いざ修了試験へ。雨と汗で、服はびっしょりなので、車に戻って着替えをして、さっぱりした気持ちで、試験に取り組みました。

修了試験は、全部で130問。マークシート方式で、今回は記述式はありません。制限時間は60分です。合格ラインは8割。

答合わせはなしで、問題も回収なので、自分の点数はわかりませんが、先生が90点とつぶやかれたので、まあそれくらいでしょう。Mさんは、間違った箇所を確認してもらっていましたが、私は合格すればよいという方なので、もう早く試験のことは忘れたい、という気分です。いけませんね〜。(笑)

 

あと、今回、初めて、Mさんと一緒に受講したわけですが、シングルハンドでない感覚も割と心地よいなと感じました。これは、大きな変化です。

今後のBCC(Basic Coastal Cruising)、BBC(Bareboat Cruising)、ACC(Advanced Coastal Cruising)などのASAのコースは、航行距離も長くなり、荒天や夜間の実習も入ってくるので、3〜4人のチームでの受講でないと、実施ができないということです。つまり、チームの中で、適切な行動ができることが重要になるわけですね。

やはり、日帰りで気ままに一人で楽しむデイセーリングが、私は性に合っていると思うのですが、外洋にも出てみたいし、長距離レースも楽しそうです。そのためには、自分の殻を少しやぶってみるのも、いいかなと。

次はいつ受講できるか、わかりませんが、BBCまでライセンスをとると、地中海などのヨーロッパ各国で通用する国際技能証明書(IPC)の発行をASAに申請できるようなので、とりあえずは、BBCコースの修了が当面の目標です。

 

 

おまけ

今回も、田尻マリーナにほど近い、ホテルアストンプラザ関西空港に宿泊しました。1泊朝食付きで大浴場もあって5000円。往復の高速料金よりも安いので、体も楽だし、なかなか良いです。

スタッフの方も、明るく親切で、気持ちが良いホテルですよ。

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一夜漬け勉強ができるスペースもあります

窓からは、田尻マリーナも望めるので、ちょっとお酒を飲みながら、講習の余韻にひたるもの良いでしょう。

では、皆さんも素敵なヨットライフを。